金翅鳥

畜生界 三

金翅鳥

第一に大きい鳥は金翅鳥(コンジチョウ)を超えることはない。その大きいもので頭から尾に至るまで八千由旬有り、高下もまた其の長さがある。若し飛ぶ時になると、一須弥より一須弥に至って途中で止まることが無い。
また一般的な金翅鳥の
身の長さは四十里、衣の広さは八十里、長さは四十里、重さは二両半である。
金翅鳥でも洗浴を行い、衣服を着る生活を為し、皆婚嫁の習慣が有ることは龍と同じ。男女の法式は人間と似ている。 金翅鳥が交尾する時もまた龍と同じように二根が合わさる。しかしただ其の時は風気のみが出て、不浄が流れることは無い。
住居は龍と同じ。生まれ方も龍と同じ。卵生、胎生、湿生、化生の四つ。 金翅鳥が閻浮提に勝る三種のことも前の龍と同じ。

卵生
彼の卵生の金翅鳥王が若し卵生の竜を奪い取ろうと欲するなら、すぐに鹿聚大樹の東の枝の上に飛んでいき、大海を観た後、更に下に飛んでいき、其の両翅を以て大海の水を扇ぎ、水を二百由旬の 広さまで開き割り、其の中に於いて卵生の竜をすぐに銜えて海の外に連れ出して、意に随って食べる。卵生の金翅鳥王は唯卵生の竜のみ取得し、之を意に随って食べる。しかし胎生・湿生・化生の竜は取ることができない。

胎生
胎生の金翅鳥王が若し卵生の竜を奪い取ろうと欲した時、すぐに鹿聚大樹の東の枝の上に飛んでいき、下に大海を観た後、亦其の両翅を以て大海の水を扇ぎ、水を二百由旬の 広さまで開き割り、其の中に於いてすぐに卵生の竜を銜えて海の外に連れ出し、意のままに食べる。卵生の金翅鳥王は唯卵生の竜のみ取得して、之を意に随って食べる。しかし胎生・湿生・化生の竜は取ることができない。
又胎生の金翅鳥王が若し胎生の竜を奪い取ろうと欲するなら、すぐに鹿聚大樹の南の枝の上に飛んでいき、下に大海を観、其の両翅を以て大海の水を扇ぎ、水を四百由旬の広さまで 開いて、其の中に向かっていき、胎生の竜を銜えて海の外に連れ出し、意のままに食べる。此の胎生の金翅鳥王は唯卵生の諸竜、及び胎生の竜のみ取得できる。つまり、湿生・化生の二種の竜は取ることができない。

湿生
湿生の金翅鳥王が若し卵生の竜を奪い取ろうと欲した時、すぐに鹿聚大樹の東の枝の上に飛んでいき、其の両翅を以て大海の水を扇ぎ、水を二百由旬の広さまで開き割り、開いたなら卵生の諸竜を銜え取 って、意に随って食べる。
又湿生の金翅鳥王が若し胎生の竜を奪い取ろうと欲するなら、すぐに鹿聚大樹の南の枝の上に飛んでいき、其の両翅を以て大海の水を扇ぎ、水を四百由旬の広さまで開き、開いたなら湿生の諸竜を銜え取っていく。
又湿生の金翅鳥王が若し湿生の竜を奪い取ろうと欲するなら、すぐに鹿聚大樹の西の枝の上に飛んでいき、其の両翅を以て大海の水を扇ぎ、水を八百由旬の広さまで開き、湿生の諸竜を すぐに銜え取って意に随って食べる。諸の湿生の金翅鳥王は、唯卵生・胎生・湿生の竜等だけ意のままに取得し、之を食べる。化生の諸竜を取ることはできない。

化生
其の化生の金翅鳥王が若し卵生の竜を奪い取ろうと欲するなら、すぐに鹿聚大樹の東の枝の上に飛んでいき、其の両翅を以て大海の水を扇ぎ、水を二百由旬の広さまで開き割り、卵生の諸竜を すぐに銜え取って、意に随って食べる。
又此の化生の金翅鳥王が若し胎生の竜を奪い取ろうと欲するなら、すぐに鹿聚大樹の南の枝の上に飛んでいき、翅を以て海を扇ぎ、水を四百由旬の広さまで開き、海が開いた後、化生の鳥王はすぐに湿生の諸竜を銜え取って、意に随って食べる。
又此の化生金翅鳥王が若し湿生の竜を奪い取ろうと欲するなら、すぐに鹿聚大樹の西の枝の上に飛んでいき、翅を以て海を扇ぎ、水を八百由旬の広さまで開き、湿生の諸竜を すぐに銜え取り、意に随って食べる。
又此の化生の金翅鳥王が若し化生の竜を奪い取ろうと欲するなら、すぐに復鹿聚大樹の北の枝の上に飛んでいき、下に大海を観、両翅を以て大海を扇ぎ、水を一千六百由旬の広さまで開き、化生の諸竜を すぐに銜え取って、意に随って食べる。
つまり、彼の諸竜は皆悉く此の金翅鳥王の食べられる所と為るのである。
しかし、別に諸竜が有って、金翅鳥王でも取ることができない龍が有る。娑伽羅竜王である。未だに彼の金翅鳥王の驚かされる所と為らない。復難陀竜王と優波難陀竜王が有り。此の 二匹の竜王は亦彼の金翅鳥王の取られる所と為らない。復阿那婆達多竜王が有り。金翅鳥王はこれも亦取ることができない。其の余の竜王で亦金翅鳥王に奪い取られて食われない者が有る。それは摩多車迦竜王、徳叉迦竜王、羯勒拏橋多摩伽竜王、熾婆陀弗知梨迦竜王、商居波陀迦竜王、甘婆羅竜王、阿湿婆多羅竜王等である。また更に余の竜が有り。其の住処の境界の中に於いて、亦復諸の金翅鳥の 食べられる所と為らない。

華厳経によれば、_此の鳥が龍を食べる所の扇ぐ風が若し人の眼に入れば、その人はすぐに失明する。故に人間界に来ず。人眼が損なわれることを恐れるため。_さらに涅槃経によれば、唯化生の龍の三帰の者のみ食べられる所と為らない。_と。

寿命

龍と同じく寿命は一劫。亦中には若死にする者もいる。

観仏三昧経によれば、「正音」という名の金翅鳥王が有り。鳥衆に於いて快楽を得、自在であり、閻浮提に於いて一日に一竜王、及び五百の小竜を食べる、四天下 に於いても更に同じように食べる。このように毎日食べ続け、八千歳を経って死相が現れる。諸の竜が毒を吐き、食を得ることができなくなる。飢渇に見舞われ安を得ず、金剛山 に至ってそこから真っ直ぐに下に向かい、大水の境より風輪の境に至って、風に吹かれて金剛山の上にまた還る。これを七返繰り返し、その後に命終する。其の毒を以ての故に、十宝山 に同時に火を起こさせる。難陀竜王は此の山が焼かれることを懼れ、すぐに車軸のような大雨を降らす。鳥肉は消尽して唯心臓だけが残る。又これが前の金剛山と同じように七返 直下を繰り返す。難陀竜王は之を取りて明珠と為し、転輪聖王は之を得て如意珠と為す。

金翅鳥に生まれるのは

金翅鳥は皆先世に大布施を行うが、その心が虚しく高ぶり、衆生に苦悩を与え、瞋慢が多かったため、此の鳥の中に生まれる。
また起世経によれば、_金翅鳥因を修し、金翅鳥戒を受持し、金翅鳥心を発起させ、金翅鳥の意(心)を思う。是の因縁を以て、身壊れて命尽き、金翅鳥の中に生まれる。_とも。


参考文献
正法念処経・起世経・菩薩處胎經・法苑珠林


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